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こんな展示は二度とできない!?中島健太×かっぴー×Dream Aya「アソビル ART SELECTION」トークイベント レポート

ただいまアソビルでは、若手アーティストやクリエイターの合同展示イベント「アソビル ART SELECTION vol.1」が11/24まで開催中です。

イベント開催を記念して、作品を展示していただいている、油絵画家・中島健太さん、漫画「左ききのエレン」原作者・かっぴーさん、写真家・Dream Ayaさんによるトークイベントを実施いたしました。

 

油絵、漫画、写真。それぞれの業界でアーティストとして活躍される3名は、どのような想いで表現を続けているのか。セッション形式で、じっくりお話を伺いました。

 

プロフィール

中島健太
武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。2009年・2014年に日展の最高賞である特選を受賞。
大学3年でプロデビューし、現在までの制作作品は500点を超え、その全てが完売。
繊細で洗練された高い技術と人間味溢れる温かな作風は、唯一無二と評価されている。『完売画家』としてテレビなどでも取り上げられ、「ベッキー」・「新川優愛」などの作品も話題に。9月30日(月)〜開始するTBS新情報番組のコメンテーターに就任するなど、新たな挑戦を続けている。
かっぴー
武蔵野美術大学でデザインを学だあと、クリエイティブ職を転々としながらアイディアを量産する。2014年に面白法人カヤックへ転職し、漫画を見た同僚に背中を押され、描いた漫画「フェイスブックポリス」をWEBサイトへ公開し、大きな反響を呼んでネットデビューを果たした。
以降、「フェイスブックポリス」の続編「SNSポリス」をはじめ「左ききのエレン」などWEBメディアでの多数の連載が始まる。大手広告代理店を舞台にした群衆劇「左ききのエレン」は、働き生きる人から多くの共感を呼び、現在はリメイク版(作画:nifuni)が『少年ジャンプ+』にて連載中。10月20日MBS/TBSドラマイムズ枠にてTVドラマの放送が決定した。
Dream Aya
2002年 dreamに新加入し、パフォーマーとしてデビュー。2011年よりE-girlsの中心メンバーとして活動し、初代リーダーも務めた。
2017年にボーカル&パフォーマーを引退。現在は、高校生の頃にはじめた写真やイラストなどのクリエイティブを活かし、様々な分野で活躍中。

 

-まず、皆さんが創作を始めたきっかけを教えてください。

 

中島 高校生のころ、進学校に通っていたのですが、勉強が嫌いだったんです。160回以上遅刻するくらいの遅刻魔だった。そんなとき、美術の先生と会って、その自由な生き方に憧れました。美術の先生って、授業なのに、誰よりも自分自身が好きなことをやっているように見えたんですね。

大学進学するときに、こんな嫌いな勉強を続けられるのかな?と思って、それなら美術の道に進もうと思って美大に入りました。

 

画家という職業になろうと思ったのは、大学1年生のとき。父親が亡くなったことがきっかけですね。生きていくために絵を描くことを仕事にしなければいけなかった。そこからはガムシャラでした。

 

かっぴー 誰しも子供の頃、一度は漫画家になりたいと思ったことがあるのではないでしょうか。僕も例に漏れず、そう思ったことのある一人でした。そのくらいの熱量なので、自分で漫画を描いてみたり、特に何かをした訳ではないんですけど。

 

社会人になって広告関係の仕事をはじめまして、そのときから絵コンテを描くのが好きでした。絵コンテというのは、CMの構成とかを漫画みたいに描くんですね。

 

その後、広告の会社を辞めて、インターネット関係の事業を中心にやっている面白法人カヤックという会社に入りました。そのとき、絵コンテ描くの好きだから、自己紹介として漫画を描こう!と思ったんですよ。なんかサイコパスみたいな思考回路なんですけど(笑)。自分が得意なことで、印象にも残るし、ってことだったんでしょうね。

 

そのときはFacebookのあるある投稿にツッコミを入れる「Facebookポリス」という漫画を描いて。みんなネットに詳しいし、まずは社内で話題になりました。そこから同僚に勧められて、ネットで公開してみたらバズったんです。「左ききのエレン」を描き始めたのはその少し後です。

結果として、会社での自己紹介のために描いた漫画が、会社を辞めるきっかけになったんですよね。

 

Aya 写真を撮り始めたきっかけは、スタッフさんにカメラを渡されて、撮ってみたらすごく褒められたからです。

みんながいい!と言ってくれるのが嬉しかったし、じゃあファンクラブの会報誌に写真を使ってみようか、とか周りもサポートしてくれたんです。ひょんなきっかけからですけど、自分も楽しくて、こうして今も続けられています。

 

– 中島さんは大学3年生の頃、プロデビューされていますよね。そこからは描く作品全て完売…と順風満帆な人生だったのでしょうか?

中島 画家って、絵が売れて収入が入ってくるのですが、今まで売れたからといって今後も売れる保証は全くないんですよ。ただ、こういうと語弊があるように聞こえてしまうかもしれないのですが…。実は、絵が売れなくて困ったことはないんですよね。

 

でも親の死というきっかけもあって、学生時代は誰よりもガムシャラに絵に向かっていましたよ。お金を稼がないといけなかったし。僕、学生時代に飲み会に行ったこともないんですよ。遊ぶこともなく、脇目も振らずに描いていました。

 

ちょっとかっぴーさんに聞いてみたいのが、同じ大学出身ですけど、どんな学生時代を過ごされていたんですか?

 

かっぴー 僕は当時、意識高い系でしたね(笑)。学生主体で色々活動して、人と人を繋いでイベントやって…そういうのが格好いい!と思っていました。

 

中島 かっぴーさんの漫画の作風もそうですよね。中で起こっていることを外に向けて描いている気がします。

 

かっぴー 確かに。おっしゃる通りですね。でも当時は、内輪だけで学校の中だけに縛られず、他大学の人とか、意識して外に意識を向けようとしていましたね。
Ayaさんは学生時代はどんな生活だったんですか?

Aya 私は、高校生のときからE-girlsとして活動しているので、普通の学生らしい思い出ってないんです。制服着て遊んだり、クレープ食べたり。だから、大学生活っていうと、E-grilsが大学みたいな感じかもしれない!

仲間がたくさんいて、練習して、週末は舞台があって…。私はリーダーで、部長のような存在だったので、強豪校の部活という感じでしょうか。放課後遊ぶこともなく、毎日強化合宿をやっているような。

 

中島 学生時代、遊ばずにガムシャラになっていた仲間ですね(笑)
そう考えると、教授陣はHIROさんとかになるわけですよね。大学として考えたら、もうすごいクオリティですよ。

 

かっぴー 中島さんの武蔵野美術大学造形学部油絵学科が倍率8倍、僕の視覚伝達デザイン学科が倍率17倍なんですが、E-girlsが大学だったら倍率2000倍くらいじゃないですか!

 

– みなさん、独特な経歴、そして唯一無二の路線を進んでらっしゃる方々だと思います。
中島さんは、売れなくて困ったことがないとのことですが…では売るために意識していたことはありますか?

中島 なぜ僕の絵が売れているかと言うと、それは自分の中の熱量の問題だと思うんですね。

売れるために、ただ描くだけでは本末転倒になってしまうし、魅力を感じない。やはり画家である以上は、うまさとか構図とかの前に自分の想いを込めることが大事だと思います。その一筆一筆にかける情熱を維持し続けることが、結果として絵としての魅力になっているんだと思います。

 

かっぴー そうですね。原作版「左ききのエレン」の第一話なんかは、コピー紙にボールペンで殴り描いたような漫画なのですが、当時の絵は怨念がこもっているとよく言われます。でもそこに魅力を感じてもらっている。それだけ、熱量や想いを込めることって重要だと思います。

 

原作版「左ききのエレン」の第一話


https://cakes.mu/posts/12577

 

– 中島さんが、芸能人の絵を書き出したきっかけは?

中島 絵画の業界って狭いんですよ。作家、画商、コレクターが全員顔見知りになってしまう。500枚も絵を売っていると、コレクターがみんな僕の絵を持ってる状態になるんです。そうなると今度は、同じコレクターに2作目を買ってもらう必要が出てきます。それって過去の自分との勝負になるんですよ。

そう考えたときに、自分はまだそのタイミングじゃないなと思っていて。僕の作品を持っている2周目の人を増やすのではなく、1周目の人を増やしたいなと思ったんです。
そのための手段として、多くの人が知っている人をテーマに描くことをはじめました。

 

– その作風は人の内面を映し出すと言われることもありますが、どうでしょう。

中島 そういう風に受け取っていただくことは多いですが、そこは受け取る方にお任せします。

今の時代、絵画は情報を正しく伝えるメディアではないと思うんです。過去、宗教画とかはメッセージ性の高い情報を詰め込む必要があったのですが、今は正しい情報を伝えるメディアが山ほどある。現代の絵画の意義ってなんだろう、と考えたときに「僕はこういう風に描いたけどみなさんはどう思いますか?」と、問いかけるメディアではないかと。

 

だから僕が描く人物画の表情は、アンニュイなことが多いというか…見る人が想像できる部分を残しています。
モナリザがなぜ魅力的かというと、なんのためにあんな風に描いたのかわからないという謎があって、見る人の想像力が掻き立てられるからですよね。真実がわからないから、みんな知りたがるんです。

 

その点、漫画は情報をわかりやすく伝えるメディアですよね?

 

かっぴー そうですね。絵画に比べると、漫画は喜怒哀楽はハッキリしているし、ストーリーもあるので、情報量は多いとは思います。

でも、僕は漫画にも余白が必要だと思っています。余白があるから、読者が想像したり、主人公に感情移入することができると思うんです。

作品の中で全部をわかりやすく説明すると子供向け漫画になってしまうんですよ。だから自分は、読者からわかりやすさを求められても寄せないし、わからないならわからないでいいと思って描いています。

 

– Ayaさんの写真は、人の素の表情を掴んだシーンが多いように思います。想いを込めて作り込むというより、人の表情を切り取ることで生まれるAyaさんの写真ならではの魅力だと思いますが、どんなときに写真を撮りたくなりますか?

Aya カメラはいつも持っているので、ふとした瞬間に撮影ができるようにしています。1日1枚は絶対に撮りますね。

今使っているのは20歳の頃から使っているフィルムカメラなんです。もう廃盤になってしまっていて、今のカメラも壊れたら中古で買うしかないんですけど。

フィルムカメラは撮り直しができるわけではないし、現像するまでどんな仕上がりか私もわかりません。それが魅力で、自分自身が楽しいところでもありますね。

でも、カメラにこだわりがあるわけでもなくて。最悪スマホのカメラでもいいんです。私が引き出せる被写体の楽しそうな表情を残せることが、私らしさなんだと思います。

 

– Ayaさんは、パフォーマーとして、そしてクリエイターとして、両方を体験される方はあまりいないのではと思いますが、だからこそ経験が生きていると思うことはありますか?

 

Aya メンバーの子の撮影をサポートするときとか、この子はこの角度から撮られる方が嬉しいんだな、とか気づくことは多いですね。疲れちゃうからなるべく同じ角度で何度も撮らないようにしてあげよう、とか、自分が昔やっていたからこそ、気持ちがわかることは多いと思います。

 

– パフォーマーからクリエイターへの転身という大きなキャリアの決断をされていますよね。女性のキャリアという視点から、エールをいただけますか?

Aya やはり勇気はいりました。引退する2年前くらいから、引退することは頭にあって。舞台で踊ったり歌ったりしながら、今後どんな風に自分が動いていけばいいのかは考えていましたね。私は周りの人に恵まれていたので、色々な人のアドバイスももらって決断することができたのですが。

やはり女性は結婚や出産や、第二の人生という観点からも考えないといけないことがたくさんありますよね。

 

でも、そうですね…。私は自分がやっていて楽しいことを続けています。パフォーマンスも、クリエイターも写真も。

こんなこと言ったら無責任かもしれないけど、迷ったら、楽しいこととか、自分がやりたいと思ったことを心のままにやることがいいんだと思います!応援してます。

 

– 「左ききのエレン」のキャッチコピーである「天才になれなかった全ての人へ」という視点は、一種独自のものかと思います。そして、それが大勢の働く人々に刺さるメッセージになっている。そういったアイディアの原泉はどういったところにあるのですか?

かっぴー これは、自分に向けてのメッセージなんですよ。「左ききのエレン」は、若かった頃、過去の自分に向けて描いた漫画なんですね。

「左ききのエレン」原作版の連載を始めましょうというときに、キャッチコピーをつけることになりまして。過去の自分に向けたものだから「昔の俺へ」とかも考えたのですが、ちょっとキモいかなと(笑)。そこで考えて出てきたのが、「天才になれなかった全ての人へ」です。

 

この言葉、言い回しは様々ですが、作中に何度も出てきています。一番最近に台詞として登場したのは「天才になれなかった私たちが〜」。他でもない自分への言葉であるという、本来の意図へどんどん近づいていっていますね。

 

でも、今ちょっと難しくて。この言葉、僕のことを最近知った人が「売れた奴が上から目線で何言ってるんだ」と思うこともあるみたいなんですよ。言葉は、いつ、誰が、どう言うかによって、受け取られ方が変わっていくので仕方ないんですが…。そうじゃないんだと。

コピー紙とボールペンで、思いの丈を描き殴った1話を見てくれと。これは昔の自分自身に向けて言ってるんです、と補足したくなりますね。

 

– 中島さんは大学3年生のときに、名刺に「画家」という肩書きを入れて批判された過去をお持ちかと思います。それでも現在、コメンテーターなど、様々な活動を広げてらっしゃる。同じように何かに挑む人に向けて、メッセージをいただけますか。

 

中島 業界や組織は、どうしても保守的になってしまうんです。今の居心地のよい状態を維持したいから、バイアスがかかってしまう。

でも、成功するためには、誰かと同じことをしていてもダメですよね。そして、批判があがるということは、他の誰もやっていないことをやっているということです。批判は推進力になると思って、気にせず進むのがいいと思いますよ。

 

例えば僕は、最近少しテレビに出させてもらっていますが、それでも今この会場にいる人はもちろん、世の中の大勢の人は僕のことを知りません。僕が目標とする知名度には全然足りない。なのに、業界からはあいつまた出てるって言われちゃう。

でもそうじゃないんです。バイアスが足を引っ張るかもしれないけど、自分の目標を明確にしていれば、批判を気にせず進むことができるんじゃないでしょうか。

 

– では、今後チャレンジしたいことや目標はありますか?

中島 画家といえば?と聞かれたときに、中島健太という名前が出てくるような存在になりたいですね。

今、同じ質問をしても、ピカソとかゴッホとかの名前が出てきて、現在いる日本の画家の名前が出てくる人は少ないと思うんです。

それだけ日常と絵画が遠くなってしまっている。絵画に携わる人間としてはそこが寂しいので、変えていきたいなと思っています。

 

かっぴー かっこつけるつもりはないですが、漫画を描くしかないなと思ってます。今回ドラマになって嬉しいですけど、ドラマを作ったのは僕じゃなく、テレビ局や役者さんたちなので。僕の手柄といえることは、ドラマにしたい!と思ってもらえる漫画を描いたことだと思うんです。

 

もともと経営もビジネスも好きで、やりたいことも多いですけど、今は「左ききのエレン」をどうしていこう、もっと楽しんでもらうためには何ができるんだろう、というところにフォーカスするフェーズなのかなと考えています。

「左ききのエレン」自体は、まだまだ続きます。今、原作版は第2章が連載中ですが、自分の想定している一番短い終わり方だとしても、まだ当分先です。楽しみにしていてください。

 

Aya この規模の展示をすることは初めてなのですが、今までもフォトバイアヤ展はやったことがあって。ただ、全部関東での開催だったんです。

この前、ファンの子に「関東意外でも開催してください!」という意見をもらって、今度は全国で開催したいなぁと。全国ツアーできたらいいなと思っていますね。

 

-最後に、展示内容の楽しみ方を教えてください。

Aya あそび人というテーマの通り、私自身くすりと笑ってしまうような写真が並んでいます。あそぶっていいなぁ、あほだなぁ、というのを見て、元気をもらってもらえると嬉しいです。

 

中島 こんな色々な作品が一堂に会する展示は、利権が絡んで普通できないんですよ。本当はこういう展示を画廊でやりたいんですが、難しくて。今回のように、想いを共にする人たちと企画できたことや、いつも支えてくれる制作チームには感謝しかないですね。
なので、このラインアップの作品展示をすること自体がもう二度とないかもしれない。この展示全体が、見どころです。

 

かっぴー これから漫画を読もうと思っている人は、この展示まだ見ない方がいいと思うんです。ネタバレになるので(笑)。でも、興味がない人にとって、導入にすごくいい展示になっていると思います。

左ききのエレンは、文中のセリフがいいと言ってもらうことも多くて、今回の展示の中にセリフを散りばめたボードがあります。
ネットで名言集を読む感覚で、作中のセリフをぜひ見てもらいたいです。で、そこで刺さるものがあればぜひ漫画を読んでもらえれば。

 

すでに読んでる方は、左ききのエレンを中心としたクリエイティブの広がりを楽しんでほしいです。ドラマのために作られて、作中で使用された小道具は、今のところ、ここでしか見られないですよ。光一の机に注目してみてください。

 

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いかがでしたでしょうか?

魅力溢れるクリエイターによる期間限定の合同展示イベント「アソビル ART SELECTION vol.1」は、11月24日(日)までアソビルで開催中です!

個性豊かなクリエイターが繰り広げる、アートの空間にぜひ遊びに来てください。

 

詳しくはこちら

 

さらに、最終日である11月24日(日) 11:00〜19:00には、中島健太さんによるライブペインティングイベントも開催されます。
作品が生まれる様子を、間近で見ることのできるまたとないチャンスです。

 

<開催概要>
名称:中島健太 ライブペインティング イベント
日時:11月24日(日) 11:00〜19:00
場所:アソビル 3F 「STAMP HALL」イベント特設会場
参加方法:「アソビルART SELECTION」のチケットをお持ちの方はご自由に観覧いただけます。
参加費:無料

 

※イベント参加費は無料ですが、別途「アソビルART SELECTION」入場チケットの購入が必要になります。

※当日に限り、再入場可能です。

2019.11.20